生きていた、触って感じる熱さ
生きていた、触って感じる熱さ
「心臓の熱さを、触って感じてほしい」
中野博文さんは、そう語る
日々の生活で食べられている食材は、生きていた命そのもの
僕はご飯を残す事は、ほとんど無い
けど居酒屋でバイトしてた時
洗い場にたくさんの食べ残された皿があり
それをゴミ箱に捨てる
ハンターはとにかく美味しく食べてあげる事を
一番に考える
人のこと
山口県の俵山温泉に住むハンター
中野博文さん
ハンターという職業が日本にあるんだと、
はじめてお会いした時は驚いた
マンガやゲームの中の世界みたい
俳優からハンターに
自然とともに生きる男の誇り

仕事のこと
ハンターの仕事はじめて見せてもらいました
今回は銃ではなく、罠に鹿がかかったという事で
鹿を捕らえ、ハンター自らの手で鹿を殺し、解体
もちろん生々しい場面も多かった
その中でも鹿の鳴き声
声で表現できないような怯えた声は、
深く心をえぐった
怯えた鹿の鳴き声
怖がらせないように、姿勢を低くして鹿に近づく
側に屈む、そっと首元に手をあて、安心させる
四本の足を縄で縛る
喉元に刃を入れる
血を抜き
鹿は死んでいく
この工程わずか数分程度ですが、その数分で
ひとつの命が終わっていく
ハンターは自分自身の手で命を奪う
だからこそ命に感謝して、
おいしく食べる事を考える
短い時間で、楽に死なせてあげる
少しでもストレスを感じたら、味が変わる
鹿が足を縄で縛られた後、
なんていうか「キューン・・・キューン・・
言葉では表現のできないような
鳴き声
捕らえた鹿の解体を見せてもらいました
正直はじめは見る事ができるか、
自信があまりなかった
ただずっと解体を見てると、
意外なほど見る事ができた
鹿の体から内臓が出てくる
空っぽになった体の中は
想像していたよりも、肉は薄く
本当に骨と、わずかの肉、薄い皮だけだった
流れ出てきた臓器は熱く
さっきまで生きていた事を
手の平の熱さから感じる
流れ出てきた血が
ゼラチンのように、手で掴める程に固まる
これが血を抜く事の重要な意味になる
「シャッシャッ」っと
刃物で皮を剥ぐ音
動物の体を、丁寧に解体していく
いただいた命、美味しく食べるために
いただきますを言うタイミング
「いただきます」
ハンターは、ありがとうを伝える
タイミングが違う
鹿の命が終わった時
食べる時
山に帰す時
山の土に鹿を帰し、
山に、「ありがとうございました」と声をかけた
「いただきます」
先ほどとれたばかりの鹿の心臓で作ったアヒージョをいただきました
なんだか食べやすいレバーのような感じ
中に入っている銀杏も、山で採れたもの
鹿の刺身も、猪の焼肉もうまかった
豚の祖先は猪
鯨の祖先が鹿
いろんな驚きと発見があった
博文さんは、ハンターの話になると
熱く真っすぐな目で語る
いろんな試行錯誤を繰り返し、これからも俵山の自然の中
ハンターとして生きて行く
ハンターという生き方には
命を奪うからこそ
自然・動物を愛して
その命を決して無駄にせず
次の命につなげる
役目があるのかも
眼鏡日和・片山正太郎写真館